tsugaru’s blog

主に技術的なことをつぶやきます。プログラミング,ポケモンGO,音楽,アニメ等

スウィングガールズを見た。この高揚感は何だろう。

私はクラシック音楽のサックス吹きを趣味でしているのだが、ジャズはなかなか触れられない領域であった。ジャズによって自分の好きなクラシックサックスの音色に影響が出るのを心配していたのが一番大きい部分である。とはいってもジャズが嫌いなわけではない。むしろ、どういうものかと探索こそしていないのであったが、「覗いてみたさ」みたいなものをずっと持っていたわけである。

それも相まって以前からスゥイングガールズを見たいと思っていた。さらに先日、IN THE MODEを演奏する機会を得て、私の吹き方はどうもクラシックであると指摘を受け、「スゥイングガールズ今の人は知らないかぁ」とお言葉を頂いた。別に負の感情というわけではないのだが、「なにこのっ!」と、思わなかった訳ではない。視聴意欲がピークに達した私は、現状Amazon Prime Video などの配信がないことを確認し、これを借りるためにXSUXAXAの会員となったわけである。

以下はネタバレを盛大に行います。ご理解ください。

もっぱらドラマなど見ない私ではあるのだが、少々古めかしい雰囲気漂うこのアットホームな感じの雰囲気の演出は、非常に良い印象を受けた。舞台が東北地方であるのも非常に良かった。スゥイングガールズは、監督が女子高校生のビッグバンドに感銘を受け作成を決め、様々な候補地の中から東北を選び、「ジャズはおっさんがやるもんだ」といったセリフも東北弁で彼女らがいうから辛辣なコメントもオブラートになる、と言っていたのだが、なるほど、大正解といってよいだろう。私は東北地方は何度か1週間程度の一人ないし二人旅に行ったのだが、電車の走る光景、雪の積もる光景、のどかな風景を映像でみて旅行を思い出したと同時に、また行きたくなったのである。

また、演技、演出の部分もよかった。幾度となくギャグを挟み、コミカルな印象であったのだが、そこには脚本としての面白さと演者たちの表情変化、動作の豊かさ、掛け合いが理由としてあったのは間違いないだろう。

さて、肝心の音楽に絡めた部分について言及しようと思う。

まず、最初の楽器の存外な扱われ方は心を痛めずにはいられなかった。「あなたが手放したくないものを一つ選べ」と言われたら、楽器を真っ先に答える自分にとって、演出であってもそのような扱われかたとなるのはどうしても心が痛んでしまう。だが、振り返るとそこまでやってくれてこそ彼女らのキャラ付けと音楽への熱中、楽しさ、変化が伝わるのであって、否定できるものではないと思った。中古の楽器について、お金持ちの人が中古の悪い部分を表明し、実際不具合が多くあった場面がある一方で、修理して最後まで使っていたのは非常に良かった。楽器は非常に高価なものである一方で、お金がない人から音楽をやる権利を奪ってはいけないのである。修理も楽器屋ではなくその辺の町工場みたいなのもそういう意味でよかった。初期メンバー以外の人は新品の楽器を買っていた。スポンサーの関係もあるのかもしれないが、メインキャラクターの際立たせの意味や、新品楽器の存在をちゃんとアピールしているあたりでバランスもよかったと思う。

練習風景については体育会系の練習で少々見ていて苦い思いがした。あくまで自分の考えではあるのだが、持久走、腹筋やブレストレーニングといったものは、楽器を手放してやるより、楽器を使ったロングトーンなどの練習のほうが良いと思う。映画であるのでパフォーマンス的意味合いであろうが、この辺のイメージは令和の時代には変わってほしいとは思う。

吹奏楽部は優遇されていていいなぁ、という部分は、自分は当事者ではあったのだが、確かに周りから見たらそう見えるなと思うと現実的で素直な感想だと思った。

スーパーの前での演奏が、初期メンバー数名の演奏を聴いてビッグバンドになるシーンがあったのだが、そこが非常に良かった。少ない人数でも音楽はできるが、そのあたりで明らかに音楽の色が豊かになってよりゴージャスでわくわくした演奏になったのは、まさに「音楽は大勢でやると楽しい」、ということを体現しているようで、見事だと思った。

彼女らはみなこのドラマをとるために楽器を練習しはじめたようだが、吹替なしにしたことでリアリティーが増し、音楽は誰でも楽しめることを示してくれたように思う。「響けユーフォニアム」というアニメにおいて、入学式演奏が絶妙に下手であり、そのリアルティーさに惹かれたのだが、それに似たものを感じた。とはいっても私はジャズの上手さはよくわからないのではあるが。

ドラムソロなど、シンプルでおそらく初心者向きのものであったのだが、それを感じさせないカッコよさがあった。最後の10分は演奏をしているのであるが、私は高揚のあまりリズムを感じながらハチャメチャに踊りながら見ていた。また、トランペットの人は音が整っていて、金管楽器のできない私からしたらすごいと思ったのである。

私は音楽は本人が楽しければ何をやってもよい、とは思っていない。が、技術力がどうであれ、演奏者とパッションを共有できたと感じれたこの演奏、演出は、まさに音楽の一体感的良さであるし、このように感じたことを大切にしたいと思た。

私にとってスゥイングガールズは、「音楽とは(音楽の楽しみ)」をストーリーではなく、表情、しぐさ、音楽で伝えてくれる映画であった。気分を前向きにしたいときに再度見たいと思えるような映画であった。

シリアス展開やねちっこい展開がなく、明るく、楽しくなる。 ぜひ、ライブに行くような気持ちで楽しんで見てほしい。

追記 スウィングガールズチームがお客さんのためにツアーを行っていたのだが、そのDVD(スウィングガールズ・ファースト&ラストコンサート)も借りた。 コンサートの中で監督が、彼女らが演技なしで心から楽しそうだったのでうらやましくなりサックスを始めた、というエピソードを聞いたとき、音楽っていいな、いい製作チームだったんだなぁと思ったのだった。 こちらも借りておいてよかった。本編が良かったと思った方はぜひこちらも見てみてほしい。 世代じゃなかったので知らなかったが、当時彼女らはまさに青春真っただ中の年であり、そういった意味でも 真のドキュメンタリー的な雰囲気を感じた。学生時代の最後の定期演奏会を思い出さずにはいられなかった。